Research Abstract |
EBウイルス関連胃癌の細胞学的特徴:外科手術により摘出された胃癌組織を対象に免疫組織学的にclaudin(CLDN)分子の発現について検討した.EBウイルス関連胃癌では,CLDN18+CLDN3-の均一な発現パターンを示し,胎児,成人胃細胞に固有の形質を保持していていた.胃固有細胞へ分化する幹細胞への感染が推定された. EBウイルス関連胃癌におけるエピジェネティック異常:EBウイルス関連胃癌では,癌抑制遺伝子プロモーター領域CpG繰り返し配列のシトシンにメチル化を高頻度に起こし,その下流の遺伝子発現が抑制されている.胃癌細胞株に組みかえEBウイルスを感染させた実験系において,PTENメチル化,PTEN発現喪失が再現された.この系では潜在期ウイルス蛋白LMP2AがSTAT3を構成的に活性化(リン酸化亢進)し,DNMT1を発現亢進させることによってPTENメチル化を引起していた.免疫組織化学的にも,EBウイルス関連胃癌組織では,pSTAT3,DNMT1がともに高発現していたことから,EBウイルス関連胃癌ではウイルス膜蛋白LMP2AがSTAT3を活性化し,エピジェネティック異常を引起しているものと考えられた. LMP2A遺伝子導入線維芽細胞の腫瘍形成能:レトロウイルスベクターを用いてLMP2AをNIH3T3細胞に遺伝子導入した.LMP2A導入細胞においては,side population(SP)分画が増加するとともに,軟寒天培地でのコロニー形成能ヌードマウス皮下腫瘍形成能の増加がみられた.現在,これらの腫瘍形成能の分子機序について検討を進めているEBウイルス潜在期蛋白トランスジェニックマウスによるメチル化促進機構の解析:LMP2Aトランスジェニックマウスを対象に,MNUを用いた発癌実験を進めている. (連携研究者:宇於崎宏講師,坂谷貴司助教,牛久哲男助教,森川鉄平助教,日野るみ助教,仲矢丈雄特任助教)
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