Research Abstract |
胃癌の1/3は高メチル化形質を示す胃癌である.このタイプの胃癌は,癌抑制遺伝子プロモーター領域CpG繰り返し配列のシトシンにメチル化を高頻度に起こし,その下流の遺伝子発現が抑制されている.EBウイルス感染細胞がモノクローナルに増殖しているEBウイルス関連胃癌は,その代表的な存在である.本研究では,EBウイルス関連胃癌におけるDNAメチル化亢進の分子機構の詳細についてEBウイルス感染胃癌細胞系,トランスジェニックマウスなどを用いて解明する.細胞内標的分子の同定により,「高メチル化形質胃癌」の病態解明,治療法の開発につながることが期待される (1)メチル化亢進機序の解明:胃癌細胞株に組みかえEBウイルスを感染させた実験系において,PTENメチル化,PTEN発現喪失が再現された.ウイルス潜在期蛋白の中でLMP2Aが異常を引起している可能性を見出した.このため.EBウイルス感染胃癌細胞株,LMP2A遺伝子導入胃癌細胞株,ならびにEBウイルス関連胃癌細胞株SNU-719,KTを用い,細胞内機序について解析を進める (2)LMP2Aの機能解析:レトロウイルスによる上皮細胞での発現系, LMP2A胃発現トランスジェニックマウスを用い,解析を進める.とくに,胃粘膜におけるLMP2Aの長期的な効果(メチル化亢進,形質変化)を検討する (3)EBウイルス関連胃癌の細胞学的特徴:EBウイルス関連胃癌の細胞学的特徴をさらに明らかにし,メチル化形質との関係を探る.このため,EBウイルス関連胃癌細胞株,早期胃癌を主な対象として,遺伝子発現プロファイリング,メチル化遺伝子プロファイリング,遺伝子コピー数解析,さらにマイクロRNA異常の解析を進める (4)ピロリ菌感染の影響:EBウイルス感染細胞株へのピロリ菌感染実験,CagA,LMP2A各々による細胞内シグナル異常の関連性について検討する (5)治療戦略の構築:メチル化阻害,脱メチル化など,EBウイルス関連胃癌を対象にした検討を行うことにより,「高メチル化形質胃癌」の治療法を探索する
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