2009 Fiscal Year Annual Research Report
高温超電導磁石を利用した重粒子線癌治療装置小型化の研究
Project/Area Number |
20249056
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畑中 吉治 Osaka University, 核物理研究センター, 教授 (50144530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 光宏 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (60370467)
依田 哲彦 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (30372147)
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Keywords | 酸化物高温超電導線 / 3テスラ双極磁石 / 交流磁石 / 交流励磁損失 / 有限要素法 |
Research Abstract |
高温超電導線材の臨界電流値は、動作温度と線材に加わる磁束密度に依存する。特に、テープ状線材表面に垂直な磁場成分を低くすることが重要である。本研究では磁極間隙で最高3テスラの磁場を発生するが、テープに加わる垂直磁場成分を2テスラ以下にしなければならない。 有限要素法数値解析を行い、磁極形状、コイル位置、ヨーク形状等の最適条件を求め磁石の設計を完成させた。コイルの上下に磁気シールド板を設置することにより、コイルに加わる磁場を低減できることが分かった。設計に基づき、コイルを製作した。製作したコイルの内半径側は、負の曲率を有している。高温超電導線を負の曲率で成形する際には、コイルにかかる荷重の詳細な検討が求められる。励磁中の電磁力によりコイルが変形して発熱・超電導状態の破れが発生するのみならず、コイルの機械的破壊の恐れもある。設計では、機械強度を確保するとともに、コイルが20-30ケルビンまで冷却されることを目標とした。各コイルはダブルパンケーの3段積層型とし、冷却効率をよくするため、パンケーキ間に冷却版を設置した。電磁気的検討から最大励磁電流を300Aと想定し、本設計での動作温度とコイル位置での磁場強度を勘案し、線材としてBi2223系を採用した。負極率をもつコイル製作では、巻線過程での線材に加える張力、コイルへの圧力等の条件を試行錯誤で最適化した。製作されたダブルパンケーキおよびコイルの臨界電流値を液体窒素温度で測定し、各々、約70A、50Aが得られた。これは、巻線過程でコイルの劣化がなかったことを示している。今年度には、コイルを収納するクライオスタットの詳細設計も完了した。本磁石は交流での励磁も計画しているが、現在、高温超電導コイルの交流損失のデータは、世界的にもほとんどない。我々が以前の研究で製作した高温超 電導空心コイルを用いて交流励磁損失を測定し、重要な知見が得られた。この結果は学術雑誌に投稿され、掲載が決定している。
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