Research Abstract |
本年度は, 19例の難治性根尖性歯周炎の根尖孔外および6例の感染根管内から得られたバイオフィルム試料より, 16S rRNA遺伝子を増幅し, プラスミドライブラリーを作製した後, シークエンサーにより細菌を同定した。根尖孔外サンプルと根管内試料から, それぞれ68種類と32種の細菌を検出した。また, 根尖孔外では18試料, 根管内では6試料すべてにおいて, uncultured bacteriumが存在した。根尖孔外バイオフィルムからはPorphyromonas gingivalis, Prevotella sp., Bacteroides bacterium, Bacteroides sp. が最も高頻度に検出され4試料から同定された他, Tanerella forsythensisやCapnocytophaga sp. などの歯肉縁下のデンタルバイオフィルム構成細菌種が多数検出された。感染根管内のバイオフィルムにおいてもP. gingivalisが6試料中4試料という高い頻度で同定された。その他, Prevotella sp., Eubacterium sp, Porphyromonas gulae, Porphyromonas sp. Actinomyces sp. といった細菌種が検出され, 根尖孔外バイオフィルム試料から同定された細菌種と比較的類似した結果が得られた。目標である100試料を目指し, さらに根尖孔外と根管内から試料を収集中である。 また, 平成20年度の繰越し期間中に行った, P.gingivalis ATCC33277株のバイオフィルム形成過程における遺伝子発現の経時的変化に関するマイクロアレイ法のデータを解析した。フローセルモデルを用いて作製したバイオフィルムを付着期, 成長前期, 成長後期, 成熟期の4つの過程に分類し, 各々の時期において1.5倍以上発現量が変化していた78遺伝子(全2090遺伝子中)を抽出した。そして, データベースと4過程での発現量の変化の頻度により, 最終的に9遺伝子(PGN0088, PGN0098, PGN0208, PGN0845, PGN973, PGN1092, PGN1131, PGN1287, PGN1309, PGN)を抽出した。 さらにW83株のデータベースよりバイオフィルム細胞の遺伝子密度を制御しているlux S遺伝子と相同性が100%の遺伝子, PGN2089の発現量の変化が, ATCC33277株のバイオフィルム細胞の増殖曲線と負の相関を示すことを明らかにした。現在, これら10遺伝子についてリアルタイムPCRにより, マイクロアレイ法の結果を検証している。
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