2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20251006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90238527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
桂田 祐介 名古屋大学, 学生相談総合センター, 研究員 (40456710)
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Keywords | ヨルダン / 新石器文化 / ダム / 遊牧 / 移牧 |
Research Abstract |
本年度は、計画していた3件の発掘調査を実施した。 1 ワディ・クウェイール106号遺跡(ヨルダン、ジャフル盆地):2010年9月に調査し、2件の石造ダムを確認した。出土遺物や立地・構造などの分析により、先土器新石器文化Bの貯留式灌漑用ダムであることが判明した。 2 ワディ・クウェイール17号遺跡(ヨルダン、ジャフル盆地):同年9月に調査した。先土器新石器文化Bの移牧拠点として機能した小型集落である。立地の近接、および類似遺物の出土などにより、106号遺跡ダム群の運営母体と同定された。 3 ファカット・ビデゥイ1号遺跡(シリア、ビシュリ山系):年度末の3月に調査した。後期新石器時代遊牧民の擬集落型墓域である。本遺跡の発見によって、ビシュリ山系遊牧化の開始時期を確定することができた。 以上3件の発掘調査によって、「水利問題と遊牧化との相関関係」にかかわる具体的データを得た。その結果、1)先土器新石器文化Bの貯留式灌漑農耕用ダムは、中規模ワディ最下流の洞れ湖(playa)に好んで立地すること、2)貯水によって生ずる塩害のため、ダムは下流方向に次々と更新されたこと、3)ワディ最下流に位置しながら下流方向へのダム更新を余儀なくされるため、結局はダム=システム(およびその運営母体である移牧拠点)自体を移転せざるを得なかった、などの重要な知見が得られた。従って、貯留式灌漑用ダムに支えられた先土器新石器文化Bの移牧は、気候乾燥化の如何に関わらず、当初から遊牧化の契機を内包していたことになる。次年度は、この新しい展望の検証に集中したい。
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Research Products
(4 results)