Research Abstract |
ガーナ国北部州トロン・クンブング郡のボンタンガ流域をコアサイトとして,他のフィールドとの比較対照を行いつつ,農村地域における水理水文現象を中心に調査とモデル化を行った.コアサイトのGbullung-West内陸谷においては,洪水のシミュレーションモデルを完成させ,雨季における短期流出過程に関する包括的理解を可能にした.その結果,同内陸谷のとくに上流部では,ダム構造物の改修や地下ダムの新規開発などの効果が高いことが予想された.そこで,表層土に関する簡易なボーリング試験を行って推定された土層構造について確認した.また,魚類に関する調査を地元漁業者の協力を得て実施し,ダムならびに伝統的稲作農業が水生生物の生態系に予想外の寄与をなしていることが認められた.さらに,ダムや井戸などの様々な水源につき,コアサイト内に20地点を設定し,研究協力者によって週1回の水質調査を行う体制を整備した.その結果,地下水の塩分濃度が水資源開発の大きな制約条件の一つとなることが明らかとなった.それに加えて窒素循環の過程も重要であることも予想され,電気伝導度,酸化還元電位,pHの観測値に基づいて,最適化に持ち込むことができる概念モデルを構築することの必要性が認識された.その他の水資源開発オプションとして風力揚水による乾季灌漑が挙げられ,ガーナ国政府によって整備された試験スキームに防獣電気柵を設置して実験を試みた.しかし,揚水風車が故障して修理がなされなかったため,乾季灌漑をおこなうことはできなかった.一方,比較対照地区であるARC-Kpong溜池においては,エンジンポンプを用いた灌漑稲作を試行し,1haあたり5.4tの高収量を得ることができた.なお,研究の成果は,国際誌に掲載予定となり,国際会議において基調講演として報告し,図書の一章として米国の出版社から刊行した.
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