Research Abstract |
ガーナ国北部州トロン・クンブング郡のボンタンガ流域をコアサイトとして,サバンナ気候下にある農村水環境の多面的な調査とモデル化を行ない,実証のための構造物を設計,施工した.気象関連の各項目,小規模ダムの水位,土壌水分プロファイルなどについて自動観測を行い,ダムや井戸など20地点を設定して水質各項目についての週1回の定期調査を行った.さらに,複数地点において重機による掘削を行い,土壌について精査した.モデルに関しては,確率微分方程式にもとづく汎用的な方法論の体系化を推進し,生物個体群や流れ場における物質輸送に関し,新しい視点からのアプローチを試みた.調査結果に基づいてモデルの有効性を実証するため,稲作圃場に地下畦畔とも呼ぶべき極めて小規模な地下ダムを建設し,また,2009年9月1日に洪水が堤体より越流して決壊した小規模ダムの修復を行った.とくに後者は,決壊部を,魚道機能を兼ね備えた洪水吐として再生するという世界的に見ても前例のない発想によるものであり,また,セメントと骨材を購入して若干の重機を利用した以外は地域住民の人力によって工事を行ない,住民レベルでのダム維持管理を指向したものである.なお,魚道によって複数の魚類生息域を接続することの正当性は,確率論的生物個体群モデルによって根拠づけられる.一方,風力揚水による乾季畑地灌漑の試験を行う予定であったが,故障した揚水機の修理が遅れて完了したため,次年度に延期することとなった.研究の成果は複数の査読つき学術誌に掲載もしくは掲載予定となった.
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