Research Abstract |
ガーナ国北部州トロン・クンブング郡のボンタンガ流域をコアサイトとして,西アフリカのサバンナ気候下にある農村水環境の多面的な調査とモデル化を行なった.気象関連の各項目,小規模ダムの水位,土壌水分プロファイルなどについて自動観測を行い,ダムや井戸など22地点を設定して水質各項目についての週1回の定期調査を行った.また,魚類の生息,移動状況,あるいは,雨季における地表水流の経路を明らかにするため,小規模ダムや稲作圃場を踏査し,文献資料を精査した.さらに,前年度に引き続き,理論の実証を目的として,稲作圃場地下畦畔の建設,ならびに,決壊ダムの修復工事を行った.以上の現地における活動に際しては,高精度のGPS測量システムを利用した.研究の内容としては,確率微分方程式にもとづいて,コアサイトにおける農村水資源開発オプションに関する新しい視点からのアプローチを試み,とくに,1次元地表流解析モデル,生物個体群持続可能性モデル,乱流場における物質輸送モデルに関して顕著な進展があった.その成果は,複数の国際誌に掲載もしくは掲載予定となった.一方,風力揚水による乾季畑地灌漑の試験を行う予定であったが,諸事情により実施できない状況となったので,これに関する工学的説明を行うための理論を構築中である.以上のように研究がおおむね順調に進展し,次年度が最終年度となることから,一部の自動観測装置よるデータ収集を除いて現地調査を完了し,論文のとりまとめに集中する体制へ移行した.今後の展開方向としては,これまでに得られた手法を高度化,汎用化することにより,世界の他の地域,とくに南アジアのサバンナ気候区への適用可能性を模索している.
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