Research Abstract |
これまで,マイクロプロセッサの性能向上や消費電力削減には,多くの努力が払われてきた.しかし,主に性能向上に寄与していた半導体技術の進展が,現在,三つの非常に大きな課題を提示している.それらはソフトエラー,ばらつき,そして経年劣化である.ソフトエラーとは,様々な雑音源が間違った結果を引き起こしてしまう過渡的でランダムな故障である.半導体の製造には確率的な要素があり,そのプロセスを100%人為的にコントロールすることはできない.ばらつきは,全トランジスタが同一の性能を持つという設計上の前提を脅かし,プロセッサの動作を不安定にする.従来,半導体は非常に信頼性の高いものであると信じられていた.しかしやはり微細化の進展に伴い,トランジスタ性能の経年劣化が深刻となっている.最先端のテクノロジで製造されたトランジスタの場合,寿命は7年程度であると言われている.以上を鑑みて,本研究は,ソフトエラー,ばらつき,経年劣化の問題を考慮した,マイクロプロセッサ向けの高信頼アーキテクチャを検討することを目的としている. 平成20年度は,上述した三つの問題のうち,ソフトエラーとばらつきについて研究した.前者については,マルチコアプロセッサの構成とディペンダビリティとの間の関係を明らかにした.後者については,回路とアーキテクチャの二面から問題を軽減する方式について検討した.いずれも,国際会議や学術論文誌に採択され,その意義を認められた.
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