Research Abstract |
本研究は,法令工学の研究として,法令文書を対象に法令構造を分析・モデル化し,モデルに基づいて,法令文書の解析法,法令文書の可読性向上法などを明かにし,法令工学の発展に資することを目的とする.法令工学は,安心安全な社会の実現に向け,「法令は社会を動かすソフトウェアである」という視点から,法令の作成・解析・変更を系統的に行う方法論,法令構造に基づいて法施行情報システムを設計・開発する方法論,法令,情報倫理,技術標準を情報システムや組織規則に反映させる方法論などを研究する学問である.本研究は法令工学の言語面に関する基本技術を対象とする。 本期間は,主に国民年金法を対象に,前期に引き続き,法令文書の法令構造の分析・モデル化,注釈付きコーパスの作成,条文の構造解析法,条文の論理表現への変換法とシステム化などに関する研究を行った.法令文書の法令構造の分析・モデル化に関しては,概念面については,国民年金法の第2章を対象に,法令要素のクラスやその関係をUMLの視点で分析し記述した.言語構造面については,複数文からなる条項の言語表現と要件効果構造との対応を分析し,その注釈コーパスを作るとともに,対応関係が大きく7種類,細かくは20種類程度に分類できることを見出した.条文の構造解析法に関しては,規則ベースと機械学習による方法を研究した,規則ベースによる方法については,複数文条項の分析に基づいて,対応パターンを正規表現により記述し,条文の構造解析システムに導入した.機械学習による方法については,要件や効果の部分をまず認識し,どの部分がどの部分と関係して一つの要件効果構造になるかを認識する2段階の方法を提案した.特に,各部分は高い精度で認識できることを示した.このような課題は新しいもので,実験結果は最初の基準を示したものといえる.
|