Research Abstract |
今年度も引き続き,ダーツの投擲運動を対象として研究を進めた.これまで,ダーツ運動の熟達者と非熟達者を比較することで,投擲動作中の肘や肩のブレが重要な差異であることを見出し,非熟達者の投擲動作中にこれらのブレが生ずることを防ぐため,肘の位置をロボットで空間的に固定することによる効果を見る実験を行った.しかし,計測システムに不具合があったため,複数の被験者に対して,多数回試行の実験を行うことが難しく,ロボットに頼り過ぎてしまうと,ロボット無くして運動がうまく生成できなくなるという仮説について,統一的な見解が得られるまでに至らなかった. そこで今年度はまずシステムの問題を解決した.続いて前述の仮説検証取り組んだ.まず実験条件を,ロボット無,ロボット有・適応無,ロボット有・適応有,の3条件とした.適応有というのは,スコアを報酬とし,肘を支えるインピーダンス制御則を方策とする強化学習を適用しAANの実現を狙った条件のことである.また,学習速度や記憶を確認するため,実験は2日間行った.各条件2名ずつの被験者を用いて実験した結果,ロボット無ではスコアの上昇は見られなかったが,ロボット有ではスコアの上昇が示唆された.適応有の場合は適応無にくらべてスコアが高くなるという傾向は示唆されなかったが,学習速度が高い可能性が見られた.今後被験者数を増やして追加実験が必要である. また,機能的電気刺激(FES)装置の運動支援利用には至らなかったが,それに向けた筋電(EMG)データの解析を進めた.肘関節や肩関節まわりのトルクを筋肉,重力,相互作用の3つの成分に分解し,スコアとの相関を調べたところ,相互作用トルクと正の相関が見られた.また運動中,筋トルクが正から負へ遷移するパターンが好ましい可能性が見られたが,これも今後被験者数を増やす必要がある.
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