Research Abstract |
本研究は,色彩環境の改善を図る上で必要不可欠な2色覚者の色覚メカニズムと色の見え方の解明を,色弁別能力と色名表現された色の見えとの不一致の解消に焦点をあてながら行うものである。様々な特性の測定,明度や錐体寄与の測定,色恒常性の測定などを通して,総合的に,仮説の検証と,2色覚者の色覚メカニズムと色の見え方の解明を行う。 平成23年度については,テーマ2「色覚メカニズムを調べる:高次色覚応答を決定する要因を明確化するため,特定の刺激条件の影響に焦点をあてる」では,(6)中性色の相違,の影響を,次の(7)とともに測定した。テーマ3「2色覚者の色世界の理解と新しい色の感性への展開」では,2色覚者における(7)色恒常性の限界について,特殊照明下での色恒常性についての実験を終了し,現在国際会議にエントリーしている。今後,これを踏まえて,データ解析により(9)メタメリズムに対する検証を行うと共に,(10)対応した新しい色覚メカニズム理論の構築を行う。 また,関連研究として,現在では3色覚者のみを対象としたものであるが「色物体の3次元配置の影響」と「影の見えの決定要因の解明」についても研究発表を行った。さらに,高次色覚応答メカニズムを明らかにする上で重要な関連研究として「正解不正解刺激の刺激呈示順序の影響」,「輝度増分と輝度減分との間の刺激応答の時間変化の影響」についても研究を行い,「順序効果が非予測的矢印手がかりにおいて観察されることと,前試行の刺激間時間に影響されることを示し,順序効果は自動記憶検査仮説で説明できる」こと(出版済),及び「人間の視覚系は減分刺激に対してより感度を持つが時間応答速度自体は変わらない」こと(再査読中),を明らかにした。
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