2010 Fiscal Year Annual Research Report
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20300096
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岡ノ谷 一夫 独立行政法人理化学研究所, 生物言語研究チーム, チームリーダー (30211121)
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Keywords | 音列 / 状況 / 言語の起源 / 大脳基底核 / 運動前野 / 海馬 / 規則学習 / 動物 |
Research Abstract |
本研究は、単語と文法の生物学的生成過程についての相互分節化仮説を検討することにある。この仮説は、音の連続的な流れを規則にもとづいて切り分ける能力と、連続的な行動文脈(状況)を規則にもとづいて分節化する能力とが相互に影響しあうことで、漠然とした状況がしだいに明瞭になり部分音列によりラベルづけされるという考え方でわる。最終年度である本年度は、進行中の実験のまとめと、原著論文の仕上げ、総説の執筆に集中した。音列分節化については、ヒトにおける規則学習(AABとABA)にともなう事象関連電位の実験をまとめ、ジュウシマツにおける同じ規則のオペラント学習と比較した。ヒトは十数分の訓練でこの規則を学習し、事象関連電位にもそれがあらわれるが、トリは数ヶ月に及ぶオペラント弁別訓練を経てもこの規則を学習することはなかった。状況分節化のモデルとしては、齧歯類と鳥類の社会行動を対象とした。海馬を損傷したデグーは、親和的コミュニケーション場面においても攻撃行動を示すなど、状況分節化の障害を示した。扁桃体を損傷したジュウシマツは、社会的隔離下において自発する隔離鳴きの頻度が低下する、新奇場面での警戒行動が減少するなど、状況分節化の障害と考えられる行動変異を示した。これらの知見をまとめた一般向けの本を日本語で出版すると共に、鳥の歌の文法性を吟味した専門的な論文を出版した。以上から、本研究は一定の成果を収めたと言える。一方、音列の分節化と状況の分節化を並行して進めるような課題を確立できず、相互分節化の過程についての理解を進めることができなかったことが反省点である。これまでの知見を総合して、さらに効率的な課題を考案して、この研究を進展させる必要がある。
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