2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経極性形成を引き起こす新規分子Shootin1の分子作用機構と脳内機能の解析
Project/Area Number |
20300111
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 直之 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 准教授 (20223216)
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Keywords | 神経細胞 / 極性 / 軸索 / 樹状突起 / Shootin1 / L1 / アクチン / 成長円錐 |
Research Abstract |
神経細胞は1本の軸索と複数の樹状突起を形成し極性を獲得する。神経極性は、神経細胞の基本的な機能であるシグナルの入出力や統合に重要な役割を果たす。最近の数多くの報告から、細胞内におけるシグナルの非対称性が培養海馬神経細胞の極性を形成することが明らかとなりつつある。しかし、このようなシグナルの細胞内における非対称性がどのような分子メカニズムで生じるかという問題は大きな謎である。最近、我々は新規神経極性形成タンパク質Shootinlを見出した。Shootinlは極性形成とともに神経細胞内で非対称に軸索に濃縮する。また、Shootinlが軸索形成作用を持ち、PI3-klnase(既知の極性形成タンパク質群のうちで最上流に位置する)の細胞内分布を制御したことから、Shootinlが神経細胞内における最初の非対称性のシグナルの形成に関与する重要な分子である可能性が示唆された。本研究では、このShootinlに焦点をしぼって重点的な機能解析を行い、Shootinlによる軸索形成作用の分子メカニズムおよび極性形成過程における非対称シグナル形成のメカニズムの解明を行った。その結果、Shootinlが「クラッチ分子」としてアクチンフィラメントと細胞接着分子L1とを連結することにより軸索伸長を引き起こすことがわかった。また、細胞内1分子解析によって、Shootinlがアクチンフィラメントと相互作用をすることにより神経突起先端に輸送されることも明らかとなった。さらに、Shootinlの脳内機能の解析のためにノックアウトマウスを作成し、現在その表現型を解析中であるが、海馬をはじめとする複数の脳領域に発生不全が見られたことから、Shootinlが脳神経系の発生に重要な役割を果たすことが示唆された。
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