2009 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ嗅覚系の神経回路網形成・機能構築原理の統合的解明
Project/Area Number |
20300117
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉原 良浩 The Institute of Physical and Chemical Research, シナプス分子機構研究チーム, シニア・チームリーダー (20220717)
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Keywords | 嗅覚系 / 神経回路網 / ゼブラフィッシュ / 行動 / 遺伝学 / 嗅球 / 手綱核 / 非対称性神経回路 |
Research Abstract |
嗅覚系は物体から発せられる匂い分子を受容し、その情報を鼻から脳へと伝え、匂いのイメージを脳内に表現・創造・記憶あるいは快・不快の感情を誘起させる神経システムである。本研究では、遺伝学・発生工学・in vivo蛍光可視化などの技術が利用可能なモデル脊椎動物としてのゼブラフィッシユの利点を最大限に活用し、以下の3つの大項目について解析を行った。(1)嗅覚神経回路網形成の分子・細胞メカニズムの解明、(2)高次嗅覚中枢における匂い情報コーディング原理の解明、(3)特定の嗅覚行動の発現に結びつく嗅覚神経回路素子の同定。平成21年度においては特に、嗅球から高次嗅覚中枢へと至る二次嗅覚神経系の分子発現・細胞構築・軸索投射バターン・神経回路形成・神経活動さらには匂いイメージ形成に至るまでの神経機構を分子レベル及びネットワークレベルでアプローチし、高次嗅覚中枢における匂い情報コーディング原理の解明を目指して研究を行った。嗅球僧帽細胞の一部のサブセットで選択的に機能する遺伝子発現エンハンサーの同定に成功し、その神経解剖学的解析を単一細胞ラベリング法などの技術を駆使して行った。その結果、嗅球の内背側部の糸球体から情報を受け取る僧帽細胞はその軸索を終脳領域へとともに、右の手綱核の内側部へと直接かつ非対称的に投射するという新たな神経回路を発見した(Miyasaka et al., 2009)。この知見は、感覚入力情報として左右の非対称性をもたない嗅覚系において、神経接続で非対称性を創造し、何らかの特異的な行動出力へと結びつけるための回路メカニズムの基盤になっていることを示唆するものである。
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Research Products
(16 results)