Research Abstract |
本研究では,遺伝子治療の開発を目的に,局所投与とEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果が有効な「膀胱がん」と「肝がん」をそれぞれ選択した.本年度において,膀胱がん治療法の開発では,ナノバブルと超音波による腫瘍壊死因子α(TNFα)遺伝子のがん細胞への導入実験をおこなった.ナノバブルの組成はDistearoyl-Phosphocholine(DSPC)+Distearoyl Phosphoethanolamine(DSPE)-PEG-OMeである.細胞実験では,EMT-6細胞およびColon26細胞にTNFα遺伝子を導入し,アポトーシスの誘導が蛍光顕微鏡で確認された.In vivo実験では固形腫瘍をマウス側腹に作製し,ナノバブルと超音波によってTNFα遺伝子を固形腫瘍に導入した.生体発光イメージング装置,CD31免疫染色,蛍光顕微鏡観察,定量PCRにより抗腫瘍効果が確認された.この事実から,TNFα遺伝子を膀胱がんに導入することで抗腫瘍効果が得られるものと判断された.肝転移治療では,ナノバブルと高周波超音波を組合せた腫瘍新生血管の三次元的な構造変化による肝転移進行度の評価法の開発を目指した.臨床で使用されているソナゾイドをコントロールに使用した.肝転移部位でのナノバブルの安定性を高周波超音波の輝度値で評価した.輝度値はナノバブルの濃度に依存し,10μg/mLで最大値が得られた.生体内での安定性は,ソナゾイドでは尾静脈注射後600秒後でも一定の輝度値を保持するのに対して,ナノバブルでは尾静脈注射後,約100秒程度で輝度値が半減した.腫瘍新生血管の三次元的な構造変化は,ソナゾイドで有意差が確認されたが,ナノバブルでは確認されなかった.この結果は,生体内のバブルの寿命時間を増加させることで,腫瘍新生血管の三次元的構造変化から,肝転移の早期診断法の開発が可能性であることが示唆された.
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