2009 Fiscal Year Annual Research Report
陰性ストレス下における陽性感情の効果に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
20300224
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Research Institution | Foundation for Advancement of International Science |
Principal Investigator |
村上 和雄 Foundation for Advancement of International Science, バイオ研究所, 所長 (70110517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 隆志 財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 研究員 (80399328)
三木 明子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (30315569)
堀 美代 財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 研究員 (90399329)
林 啓子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (50156436)
大西 淳之 財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 研究員 (40261276)
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Keywords | ストレス / 社会医学 / 職場 / 心 / 笑い |
Research Abstract |
本研究は、心理的ストレスに対するコーピングとして、陽性感情を表出することの効果を動物モデルとヒトの職場ストレスをモデルに分子生物学的に検証することを目的とする。 本年度は、ストレス度が高いことが指摘されている職業に従事する男性労働者に注目し、職場ストレスの対処法としての「笑い」の効果について心理指標、生理・生化学指標の視点から検証した。職業ストレス状態は、職場ストレッサー尺度である日本語版JCQ(Job Content Questionnaire)、日本語版努力-報酬不均衡モデル調査票を用いて測定した。心理指標は気分尺度の短縮版POMS(Profile of Mood States)・DAMS(Depression and xiety Mood Scale)、自己効力感を測るGSES(General Self-Efficacy Scale)を用い、生理・生化学指標として唾液中コルチゾール濃度、唾液中クロモグラニン濃度、唾液アミラーゼ活性を測定し検証した。実験は、男性銀行員24名(年齢40.0±11歳)を対象にし、ストレス状態が低いと思われる閑散期と、ストレス状態が高いと思われる繁忙期にデータを採取した。両期における職場ストレスを比較解析したところ、繁忙期は閑散期よりPOMS「混乱」、唾液中コルチゾールは有意に増加(p<0.05)、唾液アミラーゼ活性は増加傾向(p<0.1)を、GSESは低くなる傾向(p<0.1)を示し、職場の労働量の増加と職員のストレス状態は相関することが示唆された。次に、繁忙期において「顔面ストレッチ(笑み筋体操)」を用いた笑いトレーニング導入によって笑いを体験してもらい、トレーニング前後で解析した。その結果、POMSの「緊張・不安」「うつ」「怒り・敵意」「混乱」、DAMSの「抑うつ気分」「不安気分」は有意に減少し(p<0.05)、POMS「活気」、DAMS「肯定的気分」は有意に増加した(p<0.01)。また、唾液中コルチゾールは有意に減少した(p<0.05)。これらのことより職業ストレス状態の改善には、笑い導入が効果的であることが実証された。 本研究の実験プロトコールは筑波大学の医の倫理委員会の承認を受け、研究に先立って、被験者に研究の目的、研究の危険性を丁寧に説明し、書面による同意を得て実施した。
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