2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20300234
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 哲 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10293888)
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Keywords | 高齢者 / ひったくり / 不安感 / 歩行空間 / 道路 |
Research Abstract |
ひったくりが発生していた危険な道路、発生していない安全な道路の、昼と夜の静止画の画像内のどの要素を見ているときに、高齢者はひったくりに対する不安・安心を感じているのかについて、アイカメラを用いて得た実験結果を分析し、以下の結論を得た。 1)ひったくりの発生した危険な(以下危険な)道路で感じる妥当な不安は、平均より少ない注視点を短い時間で見て判断し、ひったくりの発生しない安全な(以下安全な)道路で感じる妥当な安心の時は、多くの注視点を長い時間見て判断している。これに対し、危険な道路で感じる妥当ではない安心の時は最も注視移動量が長く、注視時間も最も長い。安全な道路で感じる妥当ではない不安の時は注視移動量が最も少なく、注視時間も妥当な不安に次いで少ない。 また、注視回数や注視時間と不安、安心との関係がある要素を決定木分析を用いて明らかにした。 1)安全な道路で妥当ではない不安を感じる視対象の組合せ 夜に「店舗の窓/見ない>その他/1.2秒以下しか見ない>看板/見ない>高架道路など/1.5秒越見る」時、不安の割合が高い(70%)。このうち安全となる割合が68.6%、危険は残った1.5%のみとなっており、注視によって不安を抱きながら、最も安全の割合が高い。 2)危険な道路で妥当ではない安心を感じる視対象の組合せ 昼に「置き看板/1回以下しか見ない>注視点移動量/153.3越>車道/2回以下しか見ない>3階以下ビル正面の壁/0回越見る」時、安心の割合が高く66.1%となり、そのうち危険となる割合が39.3%と注視によって安心を抱きながら最も危険の割合が高い。 妥当ではない不安や安心を感じる際に見ている要素に自覚的になれば、このような不安や安心を減らすことにつながるのではないか考えられる。適切な不安は犯罪の回避のために有効であるが、過剰な不安は健康な住生活を送る上で妥当ではない。高齢者にとっての住環境の質の向上にあたり、犯罪に対する不安を減らすことは重要な意味を持ち、これに資する基礎的知見を得ることができた。
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