Research Abstract |
音声の音色・声色は,発話者の発声器官サイズや形状の違いに依存するため,同一内容の発声であっても,音としては異なる。外国語発音の評価を教師・学習者間で行なう場合,彼らの声をそのまま比較すれば,それは発音の評価ではなく,声帯模写の評価となる。発音の評価をするためには,各話者の声に不可避的に混入する体格や性別による声色のバイアスを取り除いた上で発音を比較する必要がある。声色の違いは空間写像として捉えられるため,写像不変の計量を導出し,それのみを用いて発音を表象すれば,任意の写像(即ち,話者による違い)に対して頑健な発音比較が可能となる。本研究では,f-divergenceが如何なる写像に対しても不変であることに立脚し,音ではなく,音と音のコントラストを用いた発音評価系を構築し,更には従来の音の絶対的特性に着眼した評価技術と組み合わせることで,高い頑健性と高い発音評価精度の両方を満足する技術を構築した。昨年度までは母音を中心に検討してきたが,本年度は子音までを考慮に入れ,母音,子音全体を考慮した発音評価技術を実装した。その一方で,韻律的側面に対しては予備的検討に留まった。学会発表に関しても積極的に行い,筆者等の提案する発音評価方法やその技術的実装は,音声工学的にも英語教育的にも高い評価を受けた。具体的には,デモシステムを用いた英語発音教育指導などの実践も行なうに至っている。更には,外国語学習に関する国内外の会議にて多くの招待講演をする機会を得た。
|