2009 Fiscal Year Annual Research Report
工学的アプローチによる近代製糸技術の変遷とその科学技術的評価
Project/Area Number |
20300284
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森川 英明 Shinshu University, 繊維学部, 教授 (10230103)
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Keywords | 近代化 / 生糸 / 製糸 / 時系列解析 / 産業遺産 / ケンネル / 品質 / シルク |
Research Abstract |
平成21年度は,主に座繰繰糸におけるケンネル糸道機構の解析を行った.明治期に日本に導入された繰糸技術はイタリア式とフランス式の2方式であるが,糸道機構についてはイタリア式ケンネルが多くの工場で採用されてきた経緯がある.また当時の日本人技術者はこのイタリア式ケンネルをそのまま導入しただけでなく,安東式ケンネル,稲妻式ケンネル(諏訪式)などいくつかの異なる糸道経路設計を独自に行ってきたが,これまでその技術的位置づけ(特性)についてはブラックボックスのままであり検証がなされてこなかった.本科研費課題では,これら糸道機構の技術的特性を明かにするため,実験装置を試作して異なる糸道経路,繰糸条件における座繰繰糸実験を行い,その際の繰糸張力の経時的変化,および糸道の幾何学的構成に関するデータを採取した.得られた結果を元に時系列解析,力学的解析等により検証を行うとともに,歴史的経緯についても文献等から検証した.その結果,安東式ケンネル機構は,糸切れが頻発する傾向があるものの繭糸の抱合性を高め,織物経糸用の生糸繰糸技術として使用されてきたこと,また稲妻式(諏訪式)ケンネル機構は,糸の抱合性等の品質面は犠牲にしながらも糸切れを低減し生産効率を高めることに特化した糸道機構の設定とされていたことが明らかになった.以上の実験・解析結果から,明治~昭和期の日本の外貨獲得に寄与した製糸技術の核となった技術の一つが,日本人技術者によって緻密に設計されていたことが明らかになったと考える.これらの結果は,岡谷蚕糸博物館紀要に3編の論文として,また日本蚕糸学会全国大会にて口頭発表により公表した.
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Research Products
(3 results)