2010 Fiscal Year Annual Research Report
工学的アプローチによる近代製糸技術の変遷とその科学技術的評価
Project/Area Number |
20300284
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森川 英明 信州大学, 繊維学部, 教授 (10230103)
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Keywords | 近代化 / 生糸 / 製糸 / シルク / 産業遺産 |
Research Abstract |
自動繰糸機以前に日本の近代生糸製糸業を支えた座繰繰糸技術に注目し,繰糸工程における糸道機構の解析を進めた。特に輸出生糸を通して日本の近代化に大きく貢献したといわれる諏訪式繰糸器械の「イナズマ式より掛け機能」の解析を行い,走行糸束が集緒器からケンネル部位に至る間に設けられたケンネル枠下部先端の渦巻鈎を通過する際の糸道方向に,上州座繰りの毛寄り機構を導入されていることを明らかにした。これが従来見落とされてきたイナズマ特性の重要な役割を演じていることを実証した。実験では,座繰繰糸工程における"糸道経路"(集緒器~より掛け(ケンネル)~巻き取り)に注目し,設定の異なる経路で繰糸した場合の繰糸張力の経時変化を計測し,解析した。また繰糸中の糸道の幾何学的状態(より掛け分岐点の分離角やより掛け位置等)についてもビデオカメラによる撮影・および画像によって検証を行った。実験条件としては糸道経路の他に,繰糸速度やケンネルより数についても変化させた。具体的な対象として,イタリアから導入されたケンネル式糸道,日本で改良された安東式糸道,およびイナヅマ式糸道の3種類の技術について,各糸道経路を再現し熟練した繰糸者による実繰糸実験とそのプロセスで比較検討を行った。その結果,糸道経路の違いにより,ケンネル撚り部分の形状・角度が異なると共に,走行中の生糸の張力変動(平均繰糸張力,および張力変動(分散)の差異)が確認できた。実際の繰糸工場では,繭から発生する「節」による糸切れが歩留まり上の問題となるが,安東式が高張力で節による糸切れ確率が高いのに対して,イナズマ式は節通過時のピーク張力がやや低めに抑えられており,その結果,生産効率を高めていることが確認できた。
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Research Products
(3 results)