2010 Fiscal Year Annual Research Report
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20300291
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
石崎 武志 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, センター長 (80212877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 享二 東京工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40016829)
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Keywords | 歴史的建造物 / 凍結劣化 / 塩類風化 / 撥水剤 / 保存対策 |
Research Abstract |
今年度も継続して、北海道開拓の村の歴史的建造物および小樽の歴史的建造物の劣化調査および周辺環境の調査を中心に行った。また、撥水剤を塗布したレンガ試料を用い、試料内の水分移動、塩分移動測定に関する実験を行った。 撥水剤の塩類風化抑制効果を調べるために、1050℃、900℃、750℃で焼成したレンガ試料を作成し、促進塩類風化試験を行った。試験体は、直径100mm、厚さ60mmの円柱形である。撥水剤は試験体の片面に塗布し、浸透深さは、5.0mm、7.5mm、10.0mmに設定した。実験では、可溶性塩類として硫酸ナトリウム飽和水溶液を用い、撥水剤塗布面の背後から水が浸透してきたときの条件を考え、撥水剤の塗布面を上にし、試料下面から吸水させた。実験結果から、含浸層の厚さ5.0mm、7.5mmの試験体では表層剥離が発生し、10.0mmの試験体では表層剥離が発生しなかった。促進塩類風化試験終了後、試料内部の塩類の分布状況を観察するために、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による面分析を行った。この結果から、含浸層の深さが5.0mm、7.5mmの試験体では、撥水剤の含浸周と非含浸層の界面に塩類が集積している様子が分かった。これは、撥水剤としては、試料深くまで浸透するものの方が、塩類風化抑制効果上望ましいということを示唆している。 この条件での水分移動・塩分移動をドレスデン工科大学で開発された熱水分・塩分移動解析プログラム(Delpin5)を用いて解析を行った。シミュレーションにより得られた結果は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)により得られた塩類の分布状況と対応した。また、既往の重要文化財の建造物の保存修理に関して、どの様な撥水剤、強化剤が使用されてきたのかを知る目的で、既往の修理工事報告書を調査しまとめた。
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Research Products
(3 results)