2008 Fiscal Year Annual Research Report
海洋中深層における炭素循環を駆動する有機物―微生物相互作用系の動的構造解析
Project/Area Number |
20310010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 俊 The University of Tokyo, 海洋研究所, 教授 (40183892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜崎 恒二 東京大学, 海洋研究所, 准教授 (80277871)
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Keywords | 海洋 / 中深層 / 炭素循環 / 有機物 / 微生物 / 原核生物 / 太平洋亜寒帯域 / 太平洋亜熱帯域 |
Research Abstract |
海洋中深層の有機物分解における微生物群集の特性を解明し、中深層の生態系・炭素循環モデルの高精度化に貢献することを目的とし、観測および実験的な解析を進めた。学術調査船白鳳丸KH8-2次航海において、北太平洋亜寒帯域および亜熱帯海域において、各種微生物・生化学変数の鉛直分布の観測を行った。得られた試料を用い微生物群集解析手法の検討を進めた。また、海洋地球研究船「みらい」MR08-05航海において、北太平洋亜寒帯域における各種微生物変数の鉛直分布の観測と、微生物群集解析のためのサンプリングを実施した。また、上記の航海において、中層水を用いた培養実験を行い、異なる有機物の添加に対する原核生物群集の応答を調べた。その結果、亜熱帯海域では、グルコース添加に応答して、微生物量の著しい増加がみられたのに対し、亜寒帯海域では、顕著な応答がみられないという興味深い現象が見出された。以上の結果の解析を進めた結果、中層の原核生物群集活性の制御要因として水温が重要であるという仮説が支持された。また、微生物群集解析手法として16SrRNAを標的とした蛍光現場交雑法の検討を進めたが、微生物群集のrRNA含有量が低いことから、検出効率が十分に高くないという問題が生じた。新たな定量分析方法を検討し、標的細胞が発する蛍光信号の増強を行うことで、本研究に必要な定量分析の精度を得ることができたが、この分析手法の検討に当初の計画以上の時間がかかった。そのため、サンプルの分析の一部を平成21年度に繰り越して実施した。この分析を進めた結果、本研究において中層で採取された試料については、微生物群集の大部分が細菌群集によって構成されていることが明らかになった。また、有機物の添加に応答するのは細菌群集のみであり、古細菌群集はほとんど応答を示さないという新たな知見を得た。以上の成果の一部を国際学会で発表した。
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