Research Abstract |
企業は,新製品開発のリードタイム予測,新製品の需要予測など,過去からのパターン,トレンドの外挿としては扱いにくい,多くの数量予測問題を抱えている.こうした問題は,既存の予測手法では対処しにくい.本年度は,そうした数量予測のための新しい手段として,複数の人間がもつ予測対象変数に関する知識を,市場メカニズムを用いて集約し,予測に反映させる衆知集約型数量予測法を提案した.これは,予測分布を得るための可変区間型予測証券(VIPS:Variable Interval Prediction Security)を用いた企業内予測市場システムである.企業内の比較的少数の参加者で運用した場合でも,予測証券に十分な流動性が与えられるように,独自のマーケットメーカを導入するとともに,予想される裁定機会を排除するために,独自の市場制度を提案した.また,市場参加者をエージェントとしたシミュレーションによって,提案システムの有効性を確認するとともに,導入したマーケットメーカの特徴,および価格更新の感度を調節するパラメータの影響を明らかにした.さらに,提案手法の実適用に向けて,企業内予測市場システムのプロトタイプを開発した.これは,実験室内にクライアントサーバ型のシステムとして構築したものである.クライアント側に,市場参加者の意思決定支援のためのGUIを備えており,直観的に証券取引が行えるようになっている.このシステムを用いて,提案手法の現実の機能確認のための被験者実験を行った.この結果,開発したシステムが予測市場のもつ動的な情報集約能力を備えていること,提案したマーケットメーカや市場制度が有効に機能することを確認した.
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