2011 Fiscal Year Annual Research Report
暗黙知の集約・統合化による生産システムの競争力向上
Project/Area Number |
20310087
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
水山 元 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (40252473)
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Keywords | 集合知 / 予測市場 / 知識創造 / 意思決定支援 / 需要予測 / 合意形成 |
Research Abstract |
本年度の成果を,対象としている四つの活用経路ごとに,以下にまとめる: 1.「製造現場に関する暗黙知」の「システム運用上の意思決定」への反映 本経路では,昨年度,生産システム運用上の典型的な意思決定問題の一つである「最短経路問題」に対して,予測市場を用いた解法アプローチを提案した.今年度は,このアプローチのための独自のマーケットメーカを設計し,それをプロトタイプシステムに盛り込むとともに,さらなる被験者実験を実施して,提案アプローチの性能評価を進展させた. 2.「製造現場に関する暗黙知」の「システム変革上の意思決定」への反映 本経路では,制度設計の検討に先立って,改善・革新に関する知識創造がどのようになされるのかについての理解が必要であるとの認識から,組織的知識創造プロセスの観察実験とモデル化を進めている.今年度は,昨年度実施した製品サービスシステムに対する革新案創出実験で得られたプロトコルデータの分析をさらに進めた. 3.「市場環境に関する暗黙知」の「システム運用上の意思決定」への反映 本経路では,これまでに開発してきた,セントラルマーケットメーカ方式による可変区間型予測証券を用いた予測市場システムと予測区間自律調整型予測証券を用いた予測市場システムの,被験者実験による性能評価を進展させた.また,可変区間型予測証券をダブルオークション方式で取り扱うためのアシスタントマーケットメーカを新たに開発した. 4.「市場環境に関する暗黙知」の「システム変革上の意思決定」への反映 本経路では,今年度,互いに異なる暗黙的な知識を所持した複数人が集まり,議論を交わすことによって行う集団意思決定において,知覚マップを用いて評価尺度の網羅性向上を支援するための,デルファイ法型のインタラクションを導入した議論メカニズムを開発し,被験者実験でその効果を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
四つの活用経路ごとに評価すると,まず,経路1はほぼ予定通りに進展している.経路2では,新たなデータ取得は行わず,既存データの分析を深化させることに専念した.経路3は,既開発システムの検証だけでなく,新システムを追加開発できたため,予定以上に進展したといえる.経路4では,集団意思決定の支援には,これまでのシステムをアレンジするだけでは不十分で,意思決定フローなどを含む制度設計にまで踏み込む必要性が明らかになった.この意味で,完全に予定通りに進展したわけではないものの,課題が明確になり,研究としては順調に進んだといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
経路1と3は,どちらも順調に進展してきており,この調子で進めていくことを基本とする.また,もし余裕があれば,予測市場以外のメカニズムをベースとしたシステムの開発も試みたい.経路2は,組織的知識創造プロセスの観察実験とそのログデータの分析に非常に時間がかかるのが難点であるが,今後ももう少しこれを根気よく積み重ねていくことが重要であると考えている.また,今年度経路4で取り組んだ集団意思決定支援の仕組みと組み合わせていくことも考えている.経路4については,知覚マップそのものには目処がついているので,余裕があれば,コンジョイント分析への集合知活用にも取り組みたい.
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