2010 Fiscal Year Annual Research Report
健康被害リスクへの過剰反応の発生確認と予測手法等の開発
Project/Area Number |
20310098
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
今村 知明 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80359603)
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Keywords | 社会の防災力 / リスク分析 |
Research Abstract |
(1) 過剰反応の発生と再現性の確認 ・平成19年に奈良県橿原市で発生した産科たらい回し事件について、発生した事象および公的機関や奈良県立医科大学による報道発表等を整理し、事件の事実関係の取りまとめを行った。 ・本事件では、当初は「受入れられる状況であったのに受入れを拒否した」として、医療者を非難する報道が発生したが、当日の産科医の勤務状況の公表により「受入れられない」状況であったことが明らかになり、論調が変化した。初期の段階で適切な情報提供を行ったことが報道の「火消し」として機能し、社会の過剰反応を回避できたと考えられる。 (2) 健康被害リスクにおけるゴースト効果の発生予測手法の開発 ・行政機関や民間企業が健康被害リスクを公表した後に、一般消費者等における過剰反応、及びそれによる被害の発生状況を確認する手法(観察指標の設定、情報収集方法等)について検討した。主任研究者は、社会の反応を定量化する新聞報道量に基づく指標を開発しており、今回も新聞報道量を基礎として検討を行なった。 ・これまでに発生した周産期の医療事故に関する31日間の報道量は、発生2日後の記事数により概ね規定されていたが、医療事故関連の報道は、初期の報道量が他の健康被害事件と比べると少なく、初期の報道量での見極めが困難である。 (3) 過剰反応の発生予測に基づくコミユニケーション手法の開発 ・健康被害リスクに対する報道機関、一般国民の認知特性に基づき、ゴースト効果発生を防ぐためのコミユニケーション手法について検討した。 ・医療関連の事故、事件については専門的知識が事件の構成要素となることがあり、報道機関や一般国民と専門家との間で理解に齟齬が生じ、社会的に過剰な反応が発生する。事件の発生時において、報道機関や一般国民の間で誤解されている内容を早急に特定し、誤解を解消する情報を提供することにより、社会の過剰反応を抑えることができる。
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Research Products
(3 results)