2008 Fiscal Year Annual Research Report
赤外円二色法によるスタンダード・キロプティカル構造解析法の構築
Project/Area Number |
20310127
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
門出 健次 Hokkaido University, 大学院・先端生命科学研究院, 准教授 (40210207)
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Keywords | 脂質 / ジアシルグリセロール / グリセロール / キラル / VCD / 糖脂質 / グリセロ糖脂質 / グリコシル化 |
Research Abstract |
円二色性(CD)は、タンパク質の高次構造や絶対配置の非経験的決定など高分子から低分子まで、幅広くその立体構造の研究に使用されている。このうち、近年開発が行われた赤外領域円二色性スペクトル(VCD)は振動領域の吸収、即ち化合物の赤外吸収の円二色性を利用したものであり、ほとんどすべての有機化合物に適用可能である。本研究では、VCD法を未だ応用展開されていない糖脂質、脂質等へと発展させることを目的としている。 まず、1,2-Di-ο-iropropylidene-sn-glycerolを絶対配置既知のスタート物質として用い、長さの異なる各種(R and S)ジアシルグリセロールを合成した。C14のみならず、C18脂肪酸を有するジアシルグリセロールのVCDスペクトルがカルボニル吸収領域(1700cm-1付近)に極めて特徴的なVCDシグナルを示すことが確認されている。このことにより、脂質の不斉を検出する際に、カルボニル領域が極めて有効であり、本研究の先行きが有望であることがあらためて示された。ジアシルグリセロールの両鏡像体の比旋光度は、その構造の類似性から、極めて小さい値であり、実際上、〔α〕DによるR,Sの識別は不可能に近い。本VCD法は、ジアシル脂肪酸の絶対配置を確実に決定する新規の方法論となりうる可能性が高いことが、改めてしめされた。 さらに糖脂質の合成をめざし、前述で合成した種々のジアシルグリセロールを糖アクセプターとし、保護糖(グルコース、及びガラクトースの2種類、糖ドナー)とのグリコシル化反応を行った。グリコシル化反応については、1位の結合様式の選択性が少ない反応条件を検討し(チオ糖を使用予定、AgOTf,NISによるカップリング条件等)、α結合とβ結合の両化合物を、一挙に合成し、分離により両方のサンプルを得ることに成功した。
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