2008 Fiscal Year Annual Research Report
光捕集部位-フラーレン2元系を用いる光線力学治療薬の開発
| Project/Area Number |
20310133
|
|---|
| Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
|---|
Principal Investigator |
池田 篤志 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 准教授 (90274505)
|
|---|
| Keywords | フラーレン / リポソーム / 光線力学治療法 / 癌細胞 / 2元系 / エネルギー移動 / 一重項酸素 / 活性酸素 |
|---|
| Research Abstract |
光線力学治療薬としてリポソームに含有したフラーレン(C_60)が利用可能なことを本申請者は示してきた。しかし、C_60は可視光領域での吸収が小さいため、光線力学治療法で用いられる波長領域(500〜700nm)の光照射では光線力学活性が低いことが問題となっていた。そこで、本課題では、光捕集部位(光アンテナ)を導入することでC_60との2元系とすることで光線力学活性の向上を目的の一つとしている。
本年度は光捕集部位としてボロンジピロメテン(BODIPY)色素を有する脂質分子を用いた。BODIPY脂質を混合したリポソームの中にC_60を取り込ませることで、2元系の作製を行った。そして、この2元系を用いて癌細胞であるHeLa細胞に対する光毒性を評価した。この結果、BODIPY脂質、またはC_60のみをそれぞれ含有するリポソームに比べ、2元系のリポソームは圧倒的に高い光毒性を有することが明らかとなった。この原因は、光励起されたBODIPY色素からC_60へのエネルギー移動が起こり、次に本来一重項酸素発生効率の高いC_60励起種から溶存酸素へエネルギー移動が起こることで活性酸素が発生しているためであることが確認された。また、BODIPY脂質における色素の位置が脂質の頭部にあるものの方が、脚の部分にあるものに比べ圧倒的に光線力学活性が高かった。これは、C_60がリポソームの膜表面近傍に存在するため、BODIPYが脂質頭部にあるものの方がよりエネルギー移動効率が高いことが原因であった。
|
