2008 Fiscal Year Annual Research Report
御冠船踊りの研究-対中日外交の場に生成された琉球の身体-
Project/Area Number |
20320034
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
板谷 徹 Okinawa Prefectural University of Arts, 芸術文化学研究科, 教授 (20130867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金城 厚 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (50183273)
細井 尚子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40219184)
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Keywords | 芸術諸学 / 近世琉球 / 御冠船踊り / 薩摩藩 / 琉球館 / 芸能 / 御膳進上 |
Research Abstract |
本研究は、明代以降中国の冊封体制に組み込まれ、薩摩藩を通して江戸幕府の支配を受けるという、近世琉球が置かれた政治体制のなかで、どのように主体性を維持したか、そこでどのように自己を表象したかを芸能を通して考究することを研究課題とする。初年度である本年度は、研究課題を共有する研究体制の確立と資料収集による研究環境の整備をおこなった。しかし中国から迎えた冊封使の諸宴に供される御冠船踊りの王府側の中心資料となる尚家文書の収集については、所蔵者側の事情から提供が遅れ、次年度に実現することとなった。ところで本年度の研究成果のひとつは薩摩藩との交渉のなかでの芸能の実態を明らかにしたことであった。1609年の薩摩侵攻以後、琉球は薩摩への上国使者をたびたび送ったが、慶賀を目的とする場合には芸能を帯同した。それを知る基本資料は家譜であり、冠船、江戸上りに続いて、薩摩上国の資料を「家譜にみられる芸能資料」としてまとめた。これに基づき、薩摩への上国使者が薩摩藩主への御膳進上を芸能上演の第一の場としたこと、芸能上演がもっぱら藩主をはじめとする島津家を対象とするものであったこと、王府の出先機関として鹿児島に置かれた琉球館に勤務する士族からも芸能が提供されたことなどが判明した。最後の問題は、近世琉球の士族がいかに芸能を嗜みとしていたかを明らかにすることになった。また御膳進上は薩摩藩主に対してだけではなく、国王を認証する中国の冊封使に対しても行われ、近世琉球において芸能が御膳進上と分かち難く存在していたことの証左ともなった。なお本研究は近世琉球に行われていた中国演劇である唐躍の出自をめぐって上海戯劇学院との共同研究を組むことになり、平成21年3月に沖縄で研究会を開催した。
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Research Products
(2 results)