2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代東アジアにおける漢文体とキリスト教-『天路歴程』を中心に
Project/Area Number |
20320051
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 希史 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80235077)
|
Keywords | 天路歴程 / 漢文体 / 東アジア / キリスト教 |
Research Abstract |
本年度は、『天路歴程』諸本の調査のために、国内では東北大学、個外では、ハーバード大学イェンチン研究所を中心に実地調査を行い、あわせてオクスフォード大学ボドリアンライブラリのマイクロフィルムを取り寄せて諸本を検討した。その結果、バーンズによる文言訳および官話訳、官話訳の重訳である広東語訳、さらに文言訳からの重訳である日本語訳の諸本については、詳細な書誌を作成するだけの材料がそろえられ、文言訳および官話訳については、電子画像化を終え、電子テキスト化にとりかかったところである。 また、新しい知見として、本年度は「漢字圏」と「漢文体」のかかわりについて、雑誌論文や学会発表を行い、中国・台湾・韓国・アメリカの研究者と広く意見交換を行うことができた。とりわけ、漢字圏の展開の三つの層の提唱、すなわち、中国文化の基盤としての原初的な漢字圏、近世東アジア世界の基盤としての拡大された漢字圏、近代以降の海域東アジアを中心に再編された近代漢字圏という構想を提唱したことは,大きな意義があったと思われる。 近代東アジアにおけるキリスト教の拠点は、言うまでもなく開港地を中心に広がったものだが、近代漢字圏を支えた新しい語彙と文体とメディアの生成にあたっても、香港・上海・長崎・横浜を結ぶ海域東アジアが大きな意味をもったことは、本研究が最終的に明らかにしたいと考えている近代東アジアの漢文体とキリスト教の関係を考える上でも重要な示唆を与えてくれるだろう。 なお、研究協力者の調査によって、米国聖書協会所蔵の宣教師書簡から、これまで知られなかった清国・日本・朝鮮における宣教師の活動の一端が明らかとなった。その研究成果は別途公開される予定となっている。
|
Research Products
(4 results)