2008 Fiscal Year Annual Research Report
インプット・アウトプットの処理を通した言語学習の認知神経メカニズム
Project/Area Number |
20320060
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
酒井 弘 Hiroshima University, 大学院・教育学研究科, 准教授 (50274030)
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Keywords | 言語学 / 実験系心理学 / 脳・神経 / 認知科学 / 第二言語習得研究 / 国際研究者交流 / 日本語教育 / 外国語教育 |
Research Abstract |
言語の処理を通した学習のメカニズムを探るために,次の四つの実験研究を実施した.(1)成人日本語母語話者及び中国語を母語とする日本語学習者を対照として,動詞語彙概念がどのように学習されるかを新奇動詞を用いた実験によって検討した.実験結果から,日本語母語話者と学習者はともに格助詞を学習の手がかりとして動詞と語彙概念を対応づけることができるが.他係がない場合の学習者の対応づけには,母語からの転移が観察されることがわかった.(2)中国語を母語とする日本語学習者の文理解過程におけるアスペクト情報処理について,読文時間計測実験を通して検討した.母語話者は文中の副詞や数量詞,動詞の持つアスペクト情報に敏感に反応するが,学習者の反応には母語の影響が見られることがわかった.(3)格助詞による予測が日本語母語話者の関係節処理過程に及ぼす影響について,自己ペースの読文時間を計測する実験を実施して検討した.英語を対象とした専攻研究で指摘されてきた構造的要因よりも,日本語の関係節処理には,格助詞に基づく予測が深く関わるという結果を得た.(4)文理解における語順及び格助詞の処理過程を検討するため,事象関連電位計測実験をを実施した.三項動詞を使用して,ニ格名詞句とヲ格名司句の語彙特性を無生名詞句に統制し,ニ格>ヲ格語順とヲ格>ニ格語順で提示された名詞句を読む際の事象関連電位を計測した.その結果,ニ格>ヲ格語順のヲ格名詞句を読む際に,ヲ格>ニ格語順のニ格名詞句とヲ読む際と比較して,左半球前頭部に有意な陰性成分の増加が観察された.この結果は,ニ格名詞句とヲ格名詞句を無生名詞句として含む三項動詞文においては,ヲ格>ニ格語順が規範的であることを示唆するものであった。
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Research Products
(11 results)