2009 Fiscal Year Annual Research Report
複雑述語の処理メカニズム--理論言語学と言語脳科学の協働による実証的研究
Project/Area Number |
20320069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 たかね The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10168354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 裕子 首都大学東京, 大学院・人文科学研究科, 教授 (20172835)
杉岡 洋子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00187650)
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Keywords | 言語脳科学 / 事象関連電位 / 言語処理 / 形態論 / 統語論 |
Research Abstract |
本研究は、(i)複雑述語を中心とする日本語動詞とその項関係の認知処理に焦点をあて、語の産出や理解にどのような心内・脳内メカニズムが関与しているのかを、事象関連電位(ERP)計測の手法を用いた実証研究によって明らかにすること、(ii)日本語処理に関するERPの基礎データを蓄積すること、の2点を目的としている。 本年度は、(i)については、実験が終了している使役文(サセ使役と語彙使役の比較)に関する結果の再検討を行うと同時に、新たな実験実施の準備として、受身・可能形等の言語学的考察を行った。 (ii)については、昨年度末に実験を行った複文構造(埋め込み構造)の処理負荷に関わる事象関連電位のデータ解析・結果の検討を行った。具体的には、複文構造において主文主語を指す「自分」を含む文(e.g.「受験生が、試験官が自分の受験票を確認したと言った」)の処理と、埋め込み主語を指す文(e.g.「試験官が、受験生が自分の受験票を確認したと言った」)の処理との比較を行った結果、先行詞が判明する時点(「受験票を」の処理時)において前者にN400が観察された。これは、「自分」の先行詞として埋め込み文内での処理が優先されていること、すなわち埋め込み境界を越えに処理により大きな負荷がかかっていることの反映と捉えられる。 さらに、最初の2名詞句までで、複文構造を持つと判断できるパターン(e.g.「父親が 母親が…」)、複文構造と単文構造の曖昧性をもつパターン(e.g.,「父親が 母親に…」)および単文構造を持つと判断できるパターン(e.g.「父親が 母親と…」)の3種類のパターンの処理を比較検討する実験を行った。現在、結果の解析中である。
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Research Products
(11 results)