2010 Fiscal Year Annual Research Report
均衡が無限に存在する動学モデルによる経済変動の研究
Project/Area Number |
20330038
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
小林 慶一郎 独立行政法人経済産業研究所, 上席研究員 (60371184)
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Keywords | 動学的一般均衡モデル / 貨幣的サーチ理論 / 複数均衡モデル / Diamond-Rajanモデル / 銀行取付 / 金融危機 |
Research Abstract |
本研究の目的は、金融危機によって経済のマクロ的な定常状態が長期的にシフトする可能性を理論的に分析することであった。そのために無限に均衡が存在する動学モデルを構築し、分析したが、この種のモデルは取り扱いが困難であることが、研究を進めるうちに判明した。その後、平成21年度は、貨幣的サーチ理論をベースにした銀行取付のモデルを作り、これによって定常状態が二つ存在するマクロ経済モデルを作成した。 このモデルの妥当性を検討する中で、貨幣が存在する経済モデルの中で銀行取付が発生する本質的な理由を追求する必要が生じたため、平成22年度は、いったん貨幣経済モデルから離れて、実物経済の動学モデルにおいて銀行取付が生じるモデルを検討することとした。 具体的にはDiamond and Rajan(2001)の銀行モデルを動学的モデルに組み込むことで、無限期間の経済で自然な形で銀行取付が起きるモデルを作成することができた。無限期間の動学モデルでシステミックな銀行取付が起きるモデルはこれまで知られていないので、このモデルは、景気循環研究と銀行理論を結びつける有意義な成果であると考えられる。 このモデルに貨幣を導入すること、さらに銀行取付の結果として経済が長期的に低迷すること(経済が複数均衡になるか、または、大きな振幅の不況を経験すること)を示すことが今後の課題である。これらの課題解決に向けたある程度の見通しは立っているので、今後の研究で発展をさせていきたい。
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