Research Abstract |
(1)人口変動が医療・介護保険財政に与える影響の研究 財政システム班は,将来の出生率と労働力率の想定を変えた場合に,医療・介護保険財政がどのような影響を受けるかを,長期予測が可能なモデルの特徴を活かし,シミュレーション分析をおこなった。 今年度は,出生率の想定の違いが医療・介護保険財政にどのような影響をもつか,また出生率と労働力率のどちらの低下がより深刻な影響をもつか,を分析した。現行制度のまま均衡財政方式で運営すると,将来の保険料・税負担は大きく上昇する。人口と労働力率の想定の違いが影響する時期は異なり,当初は労働力率の設定の違いが大きな影響をもつが,将来になると出生率の違いの影響が大きくなる。 また,賦課方式での運営と積立方式への移行の2方式について,世代ごとの生涯での保険料・総負担を推計したが,積立方式に移行することで二重の負担を被る世代は,賦課方式で運営する場合の負担よりも,生涯負担率は低くなる。すなわち,二重の負担の問題は,積立方式への移行のための直接的な障害とはならないことが示された。 (2)療養病床再編のサービス水準・費用への影響に関する研究 財政システム班と提供システム班は連携して,2006年医療制度改革に盛り込まれた療養病床再編が医療・介護保険財政とサービスの質に与える影響について分析した。 また,提供システム班では,要介護高齢者の個票データを用い,高齢者虐待の早期発見・防止が期待されるケアプランが,在宅介護での要介護高齢者への虐待を抑制する効果をもつかを検証した。分析の結果,ケアプランの満足度が高い介護者ほど,要介護者への虐待の頻度が低いことが観察された。これは適切なケアプランが要介護高齢者への虐待の抑制に貢献していることを表している。
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