2011 Fiscal Year Annual Research Report
リスク許容度と金融リテラシーが金融システムの産業組織に与える影響:理論と実験
Project/Area Number |
20330069
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井澤 裕司 立命館大学, 経済学部, 教授 (70222924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 隆夫 立命館大学, 経済学部, 教授 (10258494)
森 伸宏 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40190996)
岡村 誠 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (30177084)
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Keywords | リスク選好 / 金融リテラシー / 実験経済学 / 産業組織論 |
Research Abstract |
1.今年度は,海外の査読付き学術雑誌に3編の論文が掲載されたほか,海外の学会において3つの研究報告を行なった.その他,新たに2編の論文を作成した.主な今年度の新たな研究成果は以下の通りである. 2.産業組織論分野の実績 (1)寡占市場においては長期均衡の企業数が社会的余剰を最大にする企業数よりも多いという「過剰参入定理」が成立することが知られているが,通常は同質的な企業が前提とされている.我々は,従来の産業組織論における研究結果を金融業に適用し,さらに金融機関の間で費用構造が異なるような状況を想定し,長期均衡において「過剰参入定理」が成立することを理論的に示すことができた. (2)利潤最大化を目的とするノンバンクがクールノー競争をおこなっている寡占的な個人向け貸し出し市場に,社会的な余剰の最大化を目的とする公的な金融機関を導入することにより市場均衡にどのような影響を与えるか分析をおこなった.特に公的な金融機関が加わった場合において,長期均衡におけるノンバンク数について調べてみた.その結果,ある程度のノンバンクの数が存在する時には,長期均衡におけるノンバンク数よりもノンバンクを限界的に増加させた場合に社会的余剰が増加する,すなわち,経済厚生の観点からは長期均衡におけるノンバンク数は過少であることが明らかになった. 3.実験経済学分野の実績 (1)今までは困難とされていた,複数の借入を許す1年間の最適消費計画をシミュレーションによって近似解を得た.この理論値と実験による行動との差異が極めて大きいことが明らかになった. (2)他の市場参加者の投資行動に関する情報を得ることが出来る場合と出来ない場合で,herdingの発生状況に差があるかを検証するための経済実験を実施し,主観確率の形成過程に関連があることを明らかにした.
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