Research Abstract |
平成22年度は,本研究プロジェクトの最終年度にあたるため,平成20年度に実施したインタビュー調査,21年度に実施した質問紙調査のデータのさらに詳細な分析と,その結果の公表を行なった。関西家族社会学研究会や,隠岐の島町での住民との座談会などで,調査結果を報告し,公共意識と家族や地域社会の関係について議論した。そして,二つの調査をまとめた調査研究報告書を刊行した。これらのプレゼンテーションの機会を通して,本研究での知見,すなわち,公共意識の育成にとって,(1)住んでいる地域,あるいはその地域の自然,歴史,文化,公共の施設などに対してプライドという意識が重要となるということ,(2)住んでいる地域へのプライドを育む上で,人びとの間での「意味の理解と共有」が重要な条件となること,(3)家族での基本的しつけを前提に,地域の教育力が育つことが重要であること,(4)地域の教育力を育むには,顔見知りを増やし,互いにコミュニケーションする体験が増えることで地域の範囲を拡大することが必要である,(5)地域での公共マナーの育成の背景にある原理は,都市部では異質性や多様性を強調する「共生」であるが,郡部では皆が同じであることを強調する「共同」となりがちであるが,郡部でも「共同」は行き詰まりを示しており「共生」が注目されている,等々,今後の研究の発展に向けて仮説を提示することができた。
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