2011 Fiscal Year Annual Research Report
自尊心の意味、効用、および規定因に関する比較文化的研究-合理的選択の視点から
Project/Area Number |
20330131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 勧 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80134427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
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Keywords | 自尊心 / 比較文化 / イタリア |
Research Abstract |
本年度は、以下の二点などについて、実証的な研究を行った。 1.イタリアにおける自尊心変動性と将来への楽観性との関連について イタリア人大学生を対象に、日記式調査により、自尊心レベル、変動性、および自己評価への脅威の程度が、将来への楽観性に影響を与えることを確認して、その結果を学会発表し、さらに論文として公表する準備を行った。具体的には、自尊心の変動性と将来の達成期待との関係は、自尊心のレベルによって異なることが確認された。とくに低自尊心者では、自己評価に対する脅威が多いと、自尊心変動性と翌日の達成期待との間に正の関係がみられることが明らかになった。さらに、低自尊心の者では、自尊心の変動性は一ヶ月後の試験での達成期待と正の関係があったが、高自尊心の者では、自尊心の変動性は試験での達成期待と負の関係が見出された。これは、低自尊心者の間では、将来の達成への高い期待が自尊心に対する脅威の影響を低減させる効果があるのに対して、高自尊心者では、将来の達成への低い期待の方が失敗するかも知れないという懸念から自己評価を守るのに役立つためと考えられる。こうした結果は、将来への期待という形での自尊心の表出がある程度の合理性を持っていることを示すものである。 2.フィリピンにおける一般性の確認 これまでの自尊心の表出に関する結果が、フィリピンの大学生でも再現されることを確認した。これは自尊心の表出が合理的な選択の結果である、という日本での知見の一般性を示すものである。 以上の結果を英語論文として公刊する準備を行った。
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Research Products
(3 results)