Research Abstract |
本研究開始からの懸案であった静止画が動いて見える錯視の研究は,学術誌投稿において厳しい評価が続き,当初予定より若干時間がかかったものの,これまでに行ってきた追加実験を総合して最終的にNeuroImage誌に掲載された.特に,今年度は東京大学・村上研究室の協力を得て眼球運動の精密測定を行い,fMRI実験における成果を補強できたことで研究を完遂することができた.また,大脳運動視中枢に関するマルチボクセル解析の研究を当初予定より早めて前年度より行ってきたが,V5(MT+)野をサーチライト法によって同定するという成果を得て,国際学会において発表した.解析の安定性など方法論的な問題点も明らかになり,まだ論文発表には至っていないが,さらに実験研究を継続し,成果を結実させたい.次に,Smith教授(英国ロンドン大学)の協力のもと,大域的オプティカルフローパタンによる自己運動感覚の誘発に関する脳活動の同定実験を行った.大域的運動処理の端緒とみられるV5,V6野では自己運動と関連すると思われる応答は見られなかったが,さらに頭頂,前頭にかけて存在し,前庭感覚との統合が示唆される高次運動関連領野における応答が示され,国際学会での発表を企画中である.さらに補強データを得て論文発表につなげたい.最後に,Scott-Samuel博士(英国ブリストル大学)の協力を得て運動視と明るさ知覚が連動する新しい錯視に関する心理物理学的実験研究を開始した.成果の一部は国際学会で発表する予定であるが,引き続き実験を行い,理論面での展開も含めて発展させていきたい.(670字)
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