Research Abstract |
音声の知覚手がかりを明らかにするため,昨年度までに得られた音声のパワー変化に対して因子分析を行った研究から得られた4周波数帯域を用いて,日本語101単音節を分析合成して雑音駆動音声を作成し,4周波数帯城のうち一つを除去することによってどのような異聴が生ずるのかを調べた。その結果,下の3周波数帯域は,それぞれ除去されることによって異なる母音への異聴を生じさせること,一番上の周波数帯域の除去によって子音の異聴が増加すること,また,一番下の周波数帯域の除去によって有声子音から無声子音への異聴が顕著に見られることが明らかとなった。これにより,この4周波数帯域におけるパワー変化が,音声の知覚上,重要な手がかりを提供していることが明らかとなった。さらに,聴力と聞き取りやすい音声との関係を調べるため,ノイズと残響がある実環境を模擬した実験室において,健聴者と高齢者がともに聞き取りやすいテレビ放送音源の信号処理方法について検討した。その結果,健聴者では1000-4000Hzの周波数帯域を増幅し,500Hz以下の周波数帯域を圧縮することによって,聞き取りやすさが改善することがわかった。しかし,高齢者では聴力レベルや補充現象の有無によって,処理方法に対する聞き取りやすさの評価に相違が認められ,最適な処理方法を決定できなかった。また,本研究計画で開発を進めている実時間音声強調方式のパラメーターを最適化する研究を行った。その結果,このシステムにおいて最適な子音強調量は,子音によって異なることが明らかとなった。
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