2011 Fiscal Year Annual Research Report
印象、知覚、意識を包含した心的時間についての複合処理モデルの構築
Project/Area Number |
20330153
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三浦 佳世 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (60239176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一川 誠 千葉大学, 文学部, 准教授 (10294654)
荒生 弘史 広島国際大学, 心理科学部, 講師 (10334640)
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Keywords | 時間知覚 / 感性 / 感情 / 個人差 / 速度 / 時間モデル / 視聴覚 / 順序判断 |
Research Abstract |
本年度は、時間の知覚、印象、感情との関係に関し、以下の特性が見いだされた。 *時間の知覚判断・感性判断に及ぼす諸要因の検討(1):視聴覚刺激の時間順序について知覚判断と感性判断の特性を比較した結果、刺激数や持続時間など両者に類似した影響を与える要因と、刺激の指示的要因など感性的判断にのみ影響を与える要因のあることが示された。 *時間の知覚判断・感性判断に及ぼす諸要因の検討(2):身体運動と視覚刺激が非同期の場合の時間順応は、網膜位置や大脳半球に限定されないことが分かり、この種の順応には高次過程の関与することが示唆された。 *感情バーストの時間操作と印象の変化:HappinessまたはSadnessを表現した音声であっても、立ち上がりから60ms以下の長さでは、どちらもHappinessと判断され、感情を区別するには120ms以上の長さが必要であることが示された。また、自閉傾向者、抑鬱傾向者では、感情認識に異なる時間を要することが示された。 *時間知覚に及ぼす速度と時間周波数の影響:運動・点滅刺激を用いてその知覚時間を測定したところ、点滅刺激の効果量は刺激の呈示時間に比例したが、運動刺激では一定であった。また、運動刺激は静止刺激よりオンセットが先に知覚された。これらから、時間知覚における速度の影響は知覚タイミングの変化によるものであることを指摘した。 *速度変化による時間の歪み:速度変化する対象の観察時間は、速度変化が直線的であれ断続的であれ、減速対象の方が長く知覚されることが再確認された。一方、等速対象では、速い対象と遅い対象の知覚的な観察時間の差は序盤で大きいことがわかった。したがって、速度変化による時間の歪みは、刺激呈示の時間軸での相違に依存すると考えられる。 その他、かつて行われた実験をもとに、絵画における時間に関する論文も提出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度も、それぞれの研究グループにおいて、新たな成果が生み出され、著書4冊、欧文誌を含む原著論文4本、国際学会を含む学会発表23件に結実し、モデル構築に向け、次々と情報が集積している。さらに、それらを統合してモデル構築を行うための議論の場として、共同での本の執筆が進められている。 また、「時間を考える時間」という研究集会を継続させ、当該テーマを論じるための拠点形成が行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、個々の自由な研究を発展させるとともに、最終年を迎え、これまで得られた種々の成果を、知覚、感性、意識の軸で整理するとともに、視覚、聴覚、視聴覚の観点においても、特性の集約を行う。また、この作業に基づき、現在、それぞれが別個に打ち立てている時間モデルを合わせ、幅広い観点からの統合モデルの構築を行う。 また、議論の場として、さらには、成果発表の場として、分担者全員で単項本を共同執筆する。さらに、拠点形成のための研究会の開催も引き続き行い、次年度以降の新たな科研応募への土台とする。
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Research Products
(32 results)