2010 Fiscal Year Annual Research Report
教職の変容と展望に関する教育社会学的研究 -成果主義の影響と専門職の可能性-
Project/Area Number |
20330174
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
油布 佐和子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80183987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 康詞 信州大学, 教育学部, 教授 (80242105)
紅林 伸幸 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40262068)
中澤 渉 東洋大学, 社会学部, 専任講師 (00403311)
川村 光 関西国際大学, 教育学部, 准教授 (50452230)
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Keywords | 成果主義 / 教育改革 / 教職の脱専門性と再専門性 / 教員文化の磐石性 / 教師の専門性 |
Research Abstract |
本研究は、1990年代末から急速に進展した教育改革の中で、教職がどのような変容を遂げたかを明らかにし、今後の教職の行方について、学術的・政策的インプリケーションを導くことを目的としている。昨年度が、過去15年間の教師の意識・行動の変容に焦点を当てたのに対し、三年間の研究の最終年度にあたる本年は、教育改革の教育現場への浸透に着目して分析し、学会発表するとともに、研究成果出版のために必要な資料収集とフォローアップ調査を活動の中心とした。 研究成果は、世界社会学会、日本教育学会、日本社会学会で発表した。 教育改革の職場への浸透については、(1)教師の雇用形態の多様化が進展しており、非常勤講師の存在は、教育困難校では有用ではあるが、教職の質の向上という側面とは結びついていない、(2)教育改革に親和的な校長の下で学校組織・経営改革が行われているが、それが教師の日常的な活動とは関連を持たないことを明らかにした(日本教育学会)。すなわち、教育改革が教師の日常的な教育実践を変化させているかといえば、それは疑わしく、教員文化の盤石性が示された。 また、(1)改革の成果主義的な傾向は、勤務経験の長い教師たちから否定的な対応を、大都市の若い教師の間で肯定的な対応をされており(日本教育社会学会)(2)小学校の教師の成果主義への肯定的な対応は校長のリーダーシップに依拠し、中学校では、不登校やいじめなど困難な学校状況にある教師が、肯定的にとらえていることを明らかにした(世界社会学会)。このことから、成果主義は、価値の多様化の中で、教師の仕事の曖昧さ(教職の無限定性)からくる不安や疲弊を解消する手段として教師に受け入れられているのではないかと推測された。 教師の年齢による意識・行動様式の差異、大都市と地方による改革の受け止め方の差異など分析はまだ途中であり、これらを総合して、研究成果を今後出版することを目指している。
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Research Products
(7 results)