2009 Fiscal Year Annual Research Report
明治期初等国語読本とリテラシー形成メディアとしての子どもの読み物に関する研究
Project/Area Number |
20330180
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
府川 源一郎 Yokohama National University, 教育人間科学部, 教授 (00199176)
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Keywords | 翻訳啓蒙書 / 小学読本 / 古川正雄 / 比較文学 / 児童文学 / 国語教育史 / 英語教科書 |
Research Abstract |
平成21年度は、明治初期初等国語読本と子どもの読み物の状況を、国語教科書を中心として探っていった。中心になったのは、『小学読本』などの国語教科書をめぐる状況の調査と考察である。 まず、明治10年代までの国語教科書とその様相について整理・考察をした。この時期の、国語教育、とりわけ国語教科書に関する研究には、山根安太郎、望月久貴、古田東朔などの仕事がある。これらを踏まえて、従来の研究では言及されてこなかった部面の調査と整理をした。その一部を、「第116回全国大学国語教育学会(秋田学会)」において、「明治初期国語教科書の検討-福沢諭吉・古川正雄・松川半山の仕事-」と題して、口頭で発表した。この作業の中で、明治初年には、翻訳啓蒙家や戯作画家などが、教科書あるいは類似の読み物を熱心に手がけていたことがわかり、その意味について考察することができた。 次に、明治6年に刊行された最初の国語教科書というべき『小学読本』について、研究を進めた。その原本になったウィルソンリーダーとの比較については、様々な先行研究がある。これらを踏まえて、出典が不明だった第一巻の冒頭教材について、その典拠が外国の地理教科書であることを特定し、またそれが『小学読本』の冒頭に置かれたことの意味について考察した。冒頭教材という一教材についての研究だったが、それを通して明治初年には、欧化主義的な方向と国粋主義的な方向とが、互いにぶつかり合いながら展開していった様相が、教科書の教材編成や構成に表れていることを実証することができた。 さらに、『小学読本』から派生した様々な『小学読本』類似の読本についても視野を広げ、そのうち『滋賀県管内小學読本』については、論考にまとめることができた。
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Research Products
(4 results)