Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉富 巧修 広島大学, 大学院・教育学研究科, 名誉教授 (20083389)
伊藤 真 広島大学, 大学院・教育学研究科, 講師 (70455046)
北野 幸子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (90309667)
水崎 誠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50374749)
藤原 志帆 熊本大学, 教育学部, 准教授 (20381022)
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Research Abstract |
本年度は,音楽的リテラシーの育成を目指した音楽カリキュラム作成のために必要な要件を明らかにすることを目的とした。そのために,まず過去の優れた音楽カリキュラムである二本立て方式とふしづくり一本道の研究を行った。 二本立て方式による音楽教育は,1960年代から全国で盛んに行われ,約10年間で盛衰した。二本立て方式とは,豊富で多彩な音楽経験をさせるA活動と,音楽能力を系統的に育てるB活動を1つの授業内で並行して行うものである。全国的に二本立て方式が衰退していくなかで,北海道音楽教育の会は,コダーイ・システムの指導法を参考にして,多彩な遊びの要素をB活動に取り入れることによって,訓練の様相を打破し,基礎を体得させる指導法に改善した。 ふしづくり一本道は,1960年代半ばから岐阜県の飛騨地方で開発された音楽カリキュラム・音楽指導法である。様々な過程を経て,25段階80のステップにまとめ上げられたカリキュラムは,模唱奏・応答唱奏を中心として,基本拍やリズム感やフレーズ感を遊びの要素を取り入れながら体得していき,最終的には伴奏を伴った歌詞付きのふしづくりへと発展していくものであった。 両者の共通点は,(1)1時間の授業の一部を使って,音楽的感覚・音楽能力を系統的に獲得させる,(2)遊びの要素を取り入れて体得させる,等であった。これらのことは音楽的リテラシー育成のためのカリキュラムに必要な要件であることがわかった。 一方,音楽的リテラシーがどの程度獲得されているのかを知るために,中学校1年生を対象として,音楽能力調査を行った。特に,音楽的リテラシーの最も基礎となる,音楽的感覚の聴取力,内的聴覚力を調査対象とした。その結果,学校外での音楽経験が無い群(小学校音楽科授業のみで音楽学習をした生徒)は,拍子感・和声感等が育成されていないことがわかった。音楽的リテラシー育成のためには,これらの能力の獲得を念頭においたカリキュラム作成が必要である。
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