Research Abstract |
時間分解ラマン散乱測定用の光源として,BIBO非線形結晶を用いて1kHz Tiサファイア再生増幅器からのパルス光(800nm)の2倍高調波を発生する光学系を組み,最適化を行った.その結果パルス幅120fs,周波数幅190cm-1の基本波から高調波(400nm)へ効率30%で変換し,周波数幅を30cm-1まで圧縮することに成功した.さらにスペクトルのトリミングを行って,周波数幅15cm-1,パルス幅1.3psのほぼフーリエ限界パルスを約10%の効率で得ることができた.この光源を用いてSi結晶の520cm-1の光学マォノンに対して時間分解ラマン散乱測定を行い,迷光率も十分に低く,期待通りの時間分解能でラマンスペクトルが測定できることを確認した. この光源を用いて,本研究の目的であるRbMnFe系シアノ架橋錯体に対して,ポンププローブラマン測定を行ったところ,400nmの光照射による過渡的な高温相⇒低温相転移が生じている兆候を見出したが,試料の劣化が激しく励起強度を上げられないために,定量的な議論に耐えうるデータを得ることはできなかった.そこで,試料を連続的に移動させながら測定することにより,劣化を回避する方法を考案し,装置を改造中である.これにより,約100倍のS/N向上が見込める. 時間分解赤外分光に関しては,波長5μmの赤外レーザーパルスが不安定であるために精度が上がらないという問題を解決するために,再生増幅器の励起レーザーをダイオードポンプ型に更新し(科研費基盤B),さらにコンパクトで安定度の高い光パラメトリック増幅器(TOPAS)を購入(別予算)設置し,十会な性能を持っていることを確認した.
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