2009 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解ラマン,赤外,テラヘルツ分光法による光誘起相転移の研究
Project/Area Number |
20340073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
末元 徹 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授 (50134052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 誠 東京大学, 物性研究所, 助教 (40361662)
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Keywords | 光誘起相転移 / ラマン散乱 / 赤外分光 / テラヘルツ分光 / ダイナミクス |
Research Abstract |
ラマン分光による成果 シアノ架橋錯体におけるCN振動の共鳴ラマン散乱の測定を行い,Fe^<3+>-CN^--Mn^<3+>に対応すると同定されたラマン線について,非常に強い共鳴効果を見いだした.その共鳴曲線はCN^-からFe^<3+>への電子移動に対応するLMCTバンドのスペクトルとよい一致を示し,この同定が正しいことが確認された.またLMCT遷移とCN振動が非常に強く結合していることが分かった.既報の文献の中でラマンスペクトルやラマン線の数の不一致があることの主な原因が共鳴効果であることが判明した点も重要である. 時間分解赤外分光による成果 シアノ架橋錯体における時間分解赤外測定では,光源の不安定性が大きな障害になっていたが,20年度から稼動を始めた波長可変の赤外レーザー(OPA)により安定な測定が可能になった.さらに21年度に2台目のOPAを導入し,ポンプ用可視光とプローブ用赤外光の波長を自由に選択して,光誘起相転移に伴う赤外吸収を時間分解して測定することが可能になった.この実験装置により,RbMnFe系シアノ架橋錯体における高温相から低温相,低温相から高温相の双方向の相転移ダイナミクスを4K近くの低温で調べた.さらに同時に連続的に逆プロセスを誘起する光を照射する方式を考案し,蓄積効果を回避して,極めて再現性よく過渡吸収を測定できることを確認した.これまで多くの時間分解測定が,自然に逆過程が起こる高温で行われていた中で,永続的な光誘起相転移が起こる低温での研究を可能にした点が新規である. 時間領域テラヘルツ分光による成果 オルソフェライトYFeO_3においてTHz電磁波照射により強磁性共鳴に起因する磁気双極子の歳差運動をコヒーレント制御できることを見出した.この結果に基づき,希土類フェライトにおいて磁気異方性の転移温度近傍でTHz波を用いてスピン秩序を制御する可能性を検討中である.
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