2008 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブにおけるコヒーレント量子光制御
Project/Area Number |
20340075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一成 Kyoto University, 化学研究所, 准教授 (40311435)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 励起子 |
Research Abstract |
量子状態制御は、今日の物性物理学において中心的な研究テーマの一つである。これまで光励起状態の量子制御の研究は、固体では主に化合物半導体などの無機材料を舞台に行われてきた。最近の研究から、単層カーボンナノチューブは欠陥が少なく、かつフォノン散乱が抑制され、励起子コヒーレンスが長時間保持されており、量子効果を観測・制御するのに最適な系であることが明らかとなりつつある。そこで本研究では、有機材料であるナノチューブを舞台にフェムト秒パルス技術を利用して量子状態制御を試み、新たな機能性・物性の発現を目指して研究を行った。 本年度は、量子制御の実験などに必要となる高品質単層カーボンナノチューブ作製を重点的に行った。アルコールを原材料とする化学気相成長(CVD)法の成長条件を最適化し、なおかつアルコール源をバブリングして多くの原料ガスを多く供給する方法を取ることで、これまでよりナノチューブの成長レートを高めることができた。その結果、高品質でなおかつ長さが5μm程度の架橋単層カーボンナノチューブの作製ができるようになった。これらのサンプルを用いて、量子制御に向けた第一歩である、励起子のコヒーレンス時間とデコヒーレンスのメカニズムについて研究を行った。コヒーレンス時間は、単一ナノチューブのスペクトル幅より知ることができるため、スペクトル幅のナノチューブ径(カイラリティ)依存性を詳細に調べた。その結果、コヒーレンス時間はナノチューブ径に依存して変化しその依存性などから、励起子と音響フォノンとの相互作用により、デコヒーレンスが生じることがわかった。
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