2009 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブにおけるコヒーレント量子光制御
Project/Area Number |
20340075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一成 Kyoto University, 化学研究所, 准教授 (40311435)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 励起子 |
Research Abstract |
物性物理学において量子状態制御は、中心的な研究テーマの一つである。これまで光励起状態の量子制御の研究は、固体では主に化合物半導体などの無機材料を舞台に行われてきた。最近の研究から、単層カーボンナノチューブは欠陥が少なく、かつフォノン散乱が抑制され、励起子コヒーレンスが長時間保持されており、量子効果を観測・制御するのに最適な系であることが明らかとなりつつある。そこで本研究では、カーボンナノチューブを舞台に量子状態制御を試み、新たな機能性・物性の発現を目指して研究を行った。 本年度は、アハラノヲ・ボーム効果を利用したナノチューブの励起子ダイナミクスの解明に取り組んだ。筒状のナノチユーブの円筒方向と並行に磁場を印加し磁束を貫くと励起子波動関数の位相が変化し、数T程度の磁場でもアハラノブ・ボーム効果が起こり、ダーク励起子からの発光という形でそれを観測できることを明らかにした。発光強度の詳細な解析により、ブライト励起子とダーク励起子準位間では、励起子が非平衡に分布していることを明らかにした。このような励起子準位間の非平衡な分布を考慮することで、ナノチューブに特徴的な発光強度温度依存性がうまく説明できることがわかった。さらに、励起子準備位間のダイナミクスを明らかにするために、発光時間分解測定による時間領域での測定によって励起子ダイナミクスについて詳細に調べた。さらに、カーボンナノチューブの量子状態観測とその制御に向けて、15fsのチサンサファイアレーザーシステムの整備を行った。
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