Research Abstract |
本研究ではフォトニック結晶共振器に埋め込んだGaAs2重量子リングを用いて共振器QED実験を進める。具体的には,シュタルク効果による発光波長のチューニング技術を確立し,いっそう大きなパーセル効果と真空ラビ分裂を達成する。また,フォトニック結晶共振器に共振する2重量子リングをフォトン源に利用して,フォトニック結晶導波路による単一フォトン伝搬を達成する。さらに,単一フォトンを媒介として,マクロな距離離れた2つの2重量子リング間の量子もつれの実現を目指す。このために平成20年度には,シュタルク効果による励起子発光波長のチューニング,シュタルクシフトの理論解析,2重量子リングのパーセル効果の検証と制御,を目指して研究を進めた。具体的には,まず,ヒ素分子線強度と基板温度を中心に液滴エピタキシーの成長条件を種々変化させて,GaAs量子リングの形状制御を詳細に検討した。次に,電子-ホール間のクーロン相互作用を無視する近似のもとで,2重量子リングに横電場を印加したときの励起子のシュタルクシフトと波動関数の歪みを有限要素法で算出した。また,8テスラまでの磁場中で2重量子リングの顕微分光を行い,励起子アハラノフ・ボーム効果に因ると思われる発光スペクトルのシフトと強度変化を観測した。さらに,2重量子リングの励起子発光のアンチバンチングを実証した。また,フォトニック結晶マイクロ共振器によるGaAs量子ドットのパーセル効果と,フォトニックバンドギャップによる発光の抑制を実証した。さらに,これらに関連する研究として,高指数基板面を利用したGaAs量子ドットの高密度作製を行い,室温までのレーザー発振を実証した。また,フォトニック結晶のギャップ端の小さな群速度を利用したラマン散乱の増強効果を検討した。
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