Research Abstract |
本研究ではフォトニック結晶共振器に埋め込んだGaAs 2重量子リングを用いて共振器QED実験を進める。具体的には,シュタルク効果による発光波長のチューニング技術を確立し,いっそう大きなパーセル効果と真空ラビ分裂を達成する。また,フォトニック結晶共振器に共振する2重量子リングをフォトン源に利用して,フォトニック結晶導波路による単一フォトン伝搬を達成する。さらに,単一フォトンを媒介として,マクロな距離離れた2つの2重量子リング間の量子もつれの実現を目指す。このために平成21年度には,フォトニック結晶共振器の最適設計と真空ラビ分裂の検証を目指して研究を進めた。まず,20年度に行った有限要素法による計算を基礎にして,電子-ホール間のクーロン引力を配置間相互作用の方法で取り込み,励起子のシュタルクシフトの大きさをいっそう定量的に算出した。これに関連して,構造のユニークさが注目を集めている量子テトラポッドの電子準位を算出し,構造の正四面体対称性に由来する,電子,ホール,および,励起子波動関数の対称性を明らかにした。次に,共振器を実現するスラブ型フォトニック結晶の作製で必要な,犠牲層を埋め込んだ薄膜試料をGaAs基板上にMBE法で作製した。真空ラビ分裂観測のための共振器試料に加えて,単一量子ドットによるSHG(第2高調波発生)を目指した,赤外域に共振波長をもつ共振器試料も並行して作製中である。ラビ分裂の検証実験は22年度に実施する。さらに,これらに関連する研究として,酸素欠損による発光中心を含む1次元フォトニック結晶について,自然放出の増強効果を観測した。屈折率の弱変調を仮定した半解析的な理論的取扱いにより得られた発光スペクトルは観測値とたいへんよく一致し,このことから観測された増強効果がバンド端の大きな光の状態密度と小さな群速度に起因する2重増強であることが明瞭に示された。
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