2008 Fiscal Year Annual Research Report
照射分子欠陥を導入した強相関系有機導体におけるキャリア数制御とモット臨界性
Project/Area Number |
20340085
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 Tohoku University, 金属材料研究所, 助教 (20241565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80312643)
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Keywords | 分子性導体 / モット絶縁体 / 光学伝導度 / エックス線照射 / キャリアドープ / 有機超伝導体 |
Research Abstract |
本年度は, エックス線照射による分子性導体に対するキャリアドープ効果を調査するために以下の項目について研究を推進しそれぞれのような成果があった. 1)反強磁性モット絶縁体分子性導体にエックス線を照射し, その赤外スペクトルを測定した. その結果, 低エネルギー領域で, モット絶縁状態を特徴つける光学ギャップが抑制されドルーデ的な状態が現れることを確かめた. これはエックス線照射により直流電気抵抗が減少することに対応している. このことはモット絶縁状態にキャリアがドープされ金属化したことをあらわしている. 2)超伝導を示す分子性導体にエックス線を照射すると高温度域では1)のモット絶縁体物質と同様に抵抗が減少するが, 低温では, 超伝導転移温度は低下し, 残留抵抗が上昇する. さらに照射すると絶縁体的挙動が現れる. これはキャリアドープに伴う乱れの増加によりアンダーソン局在による絶縁状態が現れた結果と考えられる. 3)エックス線照射による命子欠陥生成部位を赤外振動分光により探索した. 分子性導体の赤外分光スペクトルに特徴的に現れる分子振動のエックス線照射依存性を調べることで, 損傷部位を決定できる. エックス線照射による振動モードはドナー分子ではなく, アニオン分子中の-CN振動に関するものが大きく影響を受けていることがわかった. このことは, アニオン分子の分子内結合が変化し価数が変調されることでドナー分子との電荷移動量が局所的に変化している可能性がある. エックス線照射によるキャリアドープはこのような局所的電荷移動の変調に起因していると考えられる. 4)詳細なエックス線照射効果また照射による絶縁体物質の加工を試みるための照射専用エックス線照射装置を設計し, 本研究費による21年度導入の準備を行った.
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